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あいちトリエンナーレ2016を記憶する Vol.5 森下 かおりさん

会場のボランティアさんにも聞いてみよう!

あいちトリエンナーレには、展示作品の看視や会場案内をはじめとして、様々な場面で誘導の補助をしてくれるボランティアさんが大勢いました。豊橋や近郊の方が多かったけれど、関東から「さいたまトリエンナーレ2016」と、かけもちで来てた豪傑さんもいらっしゃいました。Vol.5は、3年前のあいちトリエンナーレに遭遇した時から、今回のボランティア参加を目指していたという森下かおりさんです。

Q. >ボランティアをやってみようと思ったキッカケは?
森下 >2013年のトリエンナーレを観に行って、名古屋のまちの中に自然にアートがある事にとても感動しました。ボランティアの人たちも凄く生き生きしてて楽しそうだったんです。それで、3年後の開催を楽しみにしてました。

ある時、調べてたら、豊橋が会場の候補に挙がっててこれは絶対行かないと!と。その後、豊橋会場のボランティア募集のチラシをみつけました。折角観に行くなら、お客さんとしてではなくて、ボランティアとして関わって、より近くで現場のことなどを知る事が出来たらと思ったんです。

Q. >2013年の時は、どんな作品にインパクトを受けましたか?
森下 >納屋橋会場の名和晃平さんの作品です。あそこの空間がすごく好きでした。愛知芸術文化センターと名古屋市美術館、長者町会場にも行きました。ふと思い出してしまうのは、オノ・ヨーコの「生きる喜び」。それが今でも身体の中に残ってる。ベロタクシーに乗りながら、名古屋のテレビ塔にあるのを見たとき、ああ、アートがまちの中にあるってこれだなと思いました。
Q. >ボランティアに参加するには、お仕事との調整があると思うけど。そこはどうだった?
森下 >児童厚生員をやっていて、児童館に勤めています。児童を対象に、ワークショップなどを企画したり、実際に教えたりしてるんですよ。なので、アーティストさんがワークショップをやる所などを間近で見られたら、自分の仕事にとっても勉強になるからいいなと思ってました。それで、館長にあいちトリエンナーレ2016のボランティアをやって勉強したいんですけどと申し出ました。トリエンナーレ開催期間については、参加出来るような勤務体制にしてもらいました。

あいちトリエンナーレ2016を待ちわびて!

Q. >開催前にPLATで開催してたワークショップなどは行きましたか?
森下 >最初に行ったのは「トリエンナーレスクール」の味岡さんと拝戸さんのトークでした。その後、ボランティアに採用されたので、ワークショップの情報などが、優先的に入ってくると思ってたけどそうではなかったですね。「よくわかるトリエンナーレカレッジ」はチラシを見つけて参加しました。

ホコ天に来た「MOBIUM in 豊橋」と港監督のトーク「ワンダフル!トリエンナーレ」と「みんなでつなぐNET Project」の3回行きました。あ、そうだった。蒲郡の「森、道、市場」にトリエンナーレのブースが出るし、トークもあると聞いて行きましたよ!

Q. >おお!有りましたね。人気のイベントなので、アピール部隊が出てるんだ。さすがだなと思ってました。どうでしたか?
森下 >「森、道、市場」は、場所によっては、大変な賑わいで盛り上がっているのですが、あいちトリエンナーレのトークイベントは、入場ゲートに近いすみっこのステージテントでした。音楽ステージやショップブースのある賑やかな場所から離れていて、静かで落ちついたところにステージがあり、とてもいい雰囲気でした。
森下 >この日は、とにかく日差しが強くて暑い日だったので、トリエンナーレに興味のなさそうなお客さんも、ライブの合間に休憩がてら涼みにステージテントに集まって、ゆったりと話を聞いてる感じでした。着いた時はトークがもう始まっていて、既にテント内はお客さんでいっぱい。座るところがなくて、柱の隅のところで見ていました。アーティストとキュレーターの3人が地べたに座り込んで話しているんですよ。凄く親近感があるというか、アーティストたちとの距離が近くて、とても楽しく面白かったです。

港 千尋芸術監督監修のフリーペーパー
Q. >もしかして、森下さんたちお客さんも地べたに座り込んでる?
森下 >そうなんですよ!アーティストもお客さんも一緒に会話をしながらトークをしているような不思議な感覚だった。終始リラックスしながらの楽しいトークイベントでした。 野外のステージテントで、蒲郡の海風を感じながらトリエンナーレのトークを聞けるというのは、なかなかできない面白い体験でしたね。

テントでは、スタッフがあいちトリエンナーレ2016の黄色Tシャツを着てる!のを見つけただけで、胸が高鳴りました。

トークイベント終了後、あいちトリエンナーレ2016のコンセプトブック「AT PAPER COLORS AND WORDS」が、お客さんに配布されました。港千尋さん監修のフリーペーパーを、あの時貰えた事が嬉しくて。今でもたまにパラパラと読み返しては、大切に家にとってありますよ。

Q. >素敵なフリーペーパーですよね。会期の途中からだったけど、みずのうえビジターセンターにも置かせて貰い大人気でした。
森下 >あと、夏には洋服(トリエンナーレの展示作品で使用する、服を募集します!)を持っていったりもしました。だから、缶バッジ作りも行きましたよ。あ、花柄のプリウスが置いてある!しるこサンドがある!と感動しました。

開催前のワークショップなど

よくわかるトリエンナーレカレッジは、あいちトリエンナーレ開催に向けて、アーティストやトリエンナーレに携わる様々な方を招き、楽しみながら学ぶレクチャーシリーズでした。

実施日 タイトル 登壇者
2015年12月5日 トリエンナーレスクール 第10回「素材で表現する」 味岡 伸太郎、拝戸 雅彦
2016年2月13日 あいちトリエンナーレ豊橋会場プレ講座 拝戸 雅彦、北川 裕子
よくわかるトリエンナーレカレッジ・2016年
3月12日 第1回「あいちトリエンナーレでまちに何が起こった!?」 堀田 勝彦、拝戸 雅彦
3月19日 第2回アーティストトーク「渦まく光」 石田 尚志、拝戸 雅彦
5月4日/5日 第3回「MOBIUM in 豊橋」 河村 陽介
5月29日 第4回「ワンダフル!トリエンナーレ」 港 千尋、矢作 勝義
6月11日/12日 第5回「みんなでつなぐNET Project」 ジョアン・モデ作品

穂の国とよはし芸術劇場PLATやホコ天、こども未来館(ここにこ)などで開催されました。後にトリエンナーレ部会のメンバーとなる田口さんや児玉君も、このレクチャーに参加してたそうで、さすが豊橋!それなりに繋がってしまうんだなと思ったものです。第3〜5回の時は、森下さんも参加していた事が判明しました!参加アーティストの大巻さんや味岡さんが客席にいた事も有ったんですよ。申し込み不要なので気軽に参加できて、楽しく学べるイベントでした!

あいちトリエンナーレ2016が豊橋にやってきた!

Q. >では、ボランティアをやってみてどうでしたか?
森下 >初めて豊橋に来た人も多くて、そういう人が、今まで何気なく見てた風景だったり、ものだったりに新たな視点をくれた。豊橋の新たな魅力に気づく事ができたし、今までと生活環境の違う人の話を聞けたことも楽しかった。

美術館の展示だと、見る方も力が入るし、無言で見るのが普通という緊張した雰囲気があるけど、トリエンナーレの場合は、会話も出来る。これってなんだろう?と思いながらアートに触れている。ちょっと見に来ただけのような、アートに興味のなさそうな人とでも、なんとなく巻き込んで話が出来る。そこが凄く楽しかった。

開幕前は、初めて豊橋にトリエンナーレが来る事によって、いったい街に何が起きるんだろう、市民はどんな反応をするんだろうと、ワクワクしていたんですよ。すぐに生まれ変わらないにしても、アートが街を見直すキッカケになるのかなと期待していました。会期中は、外から来た人は、豊橋は良いね、こんなところ有ったんだねと誉めてくれたりするけれど、地元の人は通りがかったりしても、チケットが要るならと諦めてしまったり、地元だからいつでも行けるよねと後回しにしちゃったりしてしまう。

あれだけ見応えたっぷりの内容を、すごくコンパクトに見せてくれていて、しかも地元のまちなかで気軽にアートを観れること自体、とても価値のあることだと思っていました。でも、なんだか躊躇ってしまう。何かアートに対して、市民が欲してないのかなと考えてしまいました。

Q. >じわじわ変わるかもしれないけどね。豊橋には全国的に見ても特徴的な催し「こども造形パラダイス(造パラ)」が有りますよね。
森下 >造パラは自分の作品をファミリーで見にいくって感じですよね。作品を出してない人は観に行かない。そうではなくて、子どもたちが作った作品をアートとして見せる場でもある。学校別とか特色あるし、作品を見て回ると凄く面白いし、楽しい。だから、ファミリー層を呼ぶだけじゃなくて、アートを見る場として若者にもアピールするように視点を変えないと、変わらないんじゃないかと思ってます。
Q. >なるほど、もっとアートへの理解を深めていく感じかしら?みずのうえビジターセンターでは期間中に開催された「現代アートであそぼう・かこう 親子でワークショップ」の作品を展示しました。
森下 >私自身としては、アートと遊びと子どもをつなぐワークショップを展開していきたいと考えています。遊びを通して、子どもの想像力や感性が育まれるようなもの。児童館では今までも定期的にやっていました。今回トリエンナーレに参加してみて、豊橋市民が積極的にトリエンナーレを受け入れて、準備段階から市民が加わり、街全体で盛り上げていくことが出来たら、もっと面白いことが生まれていたのかも、と考えるようになりました。

そのきっかけとして、まずは子どもたちに介入してもらうことで、アートに触れながら遊んでもらう。豊橋でアートの土壌をしっかり育てていけば、今後の児童館の活動にもつながるかなと思い、seboneに入りました。次のトリエンナーレまでの間に、この東三河に住んでいる人たちをもっと巻き込むような活動が出来たらと思っているんです。

現代アートであそぼう・かこう 親子でワークショップ

豊橋在住作家すぎうらよしこ、杉浦朋(アタント)さんの企画。穂の国とよはし芸術劇場PLATで開催されたワークショップです。出来上がった作品をみずのうえビジターセンターに展示しました。 展示作品は、沢山のご家族が見に来てくれました。

Q. >最後のQね。開発ビルと狭間ビルは、次回のトリエンナーレの時はもう無くなってるから使えないですよね。森下さんだったらどこを会場に選びますか?今回、豊橋市の公会堂をイベントに使ってたのはどう思いました?
森下 >公会堂は、市電に乗っていけるから行きやすいと思いました。駅からちょっと離れているけど、そこでも会場に出来るんだ!という驚きがあった。今度の会場候補ですけど、西駅の高架下とかはどうでしょう。
Q. >なるほど、若い人らしい発想かも。拝戸さんと黒野さんの対談の時に、歴史的に面白い所だから会場として使ったという話が出たんですね。じゃここも歴史的な価値があるから今度使うといいね、のようにあの場所は?この建物はどうかな?と成り立ちなども含めて考えてみるのも面白いかも。小さな事かもしれないけど、街を見直すキッカケになるかなと思ったんです。seboneの活動も頑張ってください。有難うございました。
森下 かおり Kaori Morishita
あいちトリエンナーレ2016 ボランティア
1987年愛知県豊橋市生まれ。豊橋市在住。愛知大学文学部人文社会学科西洋哲学専攻卒業。児童厚生員として、2010年より東三河の児童館に勤務。あいちトリエンナーレ2016閉幕後、2004年より始まった都市型アートイベント「sebone」実行委員会に参加。
2016年12月[interview:S.Hikosaka]

会期は終了しています。記録として掲載しています。





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