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あいちトリエンナーレ2016を記憶する Vol.8 小泉 仁敬さん

目の前でブリコラージュ?!

こだわりの食材はおまかせ!スーパーの「フードオアシスあつみ」や、あったかキッチン「まあるいおさら」でお馴染みの渥美フーズから、精鋭、小泉仁敬君の登場。みずのうえビジターセンターで販売した飲み物類は、全て彼が配達してくれました!
Q. >印象的だった出来事はありますか?
小泉 >みずのうえビジターセンターのオープニングに向けての手伝いをしてて、看板があるといいよねって話になったんです。そうしたら、そのまま山田先生(Vol.10 参照)と愛大の学生さんたちが、水上ビルの倉庫の奥に置いてあった板とか、あり合わせの材料を探して持ち出しくるんですよ。

自分の職場だと上司が決めたものを作ったり、業者の方に頼んだりするんですけど、その場で自分達で考えたものを、通路に机を並べて、ちゃちゃっと作り始めてしまう。看板やポップを楽しそうに作っている。ああいう感じが凄い新鮮で、面白かったですね。ブリコラージュが準備段階で体感できた。まさにアートイベントのはじまりだと感動しました!

Q. >小泉さんが納品してくれた飲み物のポップも学生さんたちが可愛く作ってくれたんですよね。あいちトリエンナーレが豊橋にやってくる事についてはどうでしょう?
小泉 >九州の大学に行ってて、その時にアートイベントのアルバイトをやったんです。美術系の学校ではないし、アートイベントがどんなものなのかも解らなかったけど、その時の経験で「アート」や「作家」さんたちって面白いなと思いました。何をして良いのか解らなくて、ともかく蟻のごとく働く、頼まれたことは何でもやる!をテーマにしてましたね。エリアの歴史を調べて作家さんに知らせたり、作品に使う古い家を掃除したりしてた。それで、トリエンナーレを豊橋でやる事になったと聞いて、来たー!と思いました。

全国的にアートイベントが多いという声を聞きますが、自分の育った場所でアートイベントがあることは本当に嬉しいし、ありがたいです!


穂の国とよはし芸術劇場PLAT前
Q. >そうだったんですね。トリエンナーレ部会のメンバーに誘われた事ついてはどうでしょう?
小泉 >山田さんの漁網のイベントに参加したのがキッカケです。会社の本部は渥美半島にあって、通勤時にみる半島の景色にかなり惹かれていて、自分の中で「半島ブーム」だったんです。半島では漁網をよく目にするので「漁網」というキーワードを見て応募しました。

プラット前の芝生は前から気持ちよくて、勝手に身近に感じていました。そこに、子供から大人まで参加していて、まさに「漁村」のような風景が駅前のプラットにあらわれたことに感動しました。

その後もメディア芸術のイベントに何度かお邪魔しました。ある時、市役所の友人と、山田さんの二人から声がかかり、トリエンナーレ部会に参加する事になったんですよ。

Q. >渥美フーズとしての参加要請だと思ってたのですが、違ったんだ。個人でも興味があったし、長期のアートイベントがどんな風に展開していくのかが解っていたんですね。
小泉 >いや詳しくはないですけど、大まかには・・・。

会社としての関わり方は「ドリンクの手配」でしたが、みずのうえビジターセンターに飲み物を納品に行って作家さんに偶然行き合ったり、作品の情報が入ってきたりとか、遠方から来た人と話をするキッカケになったりだとか、いろいろ生まれるものはありました。「ドリンクの手配」というライトな関わりでしたが個人的には充分面白かったです。

豊橋市公会堂から作家さんをウェルカム・パーティの会場へ誘導する

Q. >オープニング・イベントである石田さんのプロジェクションにはトリエンナーレ部会のスタッフとしての使命つきで、参加してましたよね。歴史的な建物に作品を投影するという事で、他の地域の人たちと一緒に鑑賞するじゃないですか。どうでしたか?
小泉 >すごく綺麗だったです。公会堂は、地元の住民なら学生の時などによく使ってたりしますよね。普段、あまり意識する事もなく何気なく使っている建物だったんだけど、プロジェクションをやった事で、どんな歴史だったんだろ?と今まで感じてなかった公会堂への興味はわきました。
Q. >同じ公会堂を使ったという事ではテレビドラマの「みんな!エスパーだよ!」でも使われていたけど、観てました?
小泉 >映画は観ました。でも、エスパーでは登場人物ばっかりに目が行ってた。建物自体に興味は無かったです。
Q. >エスパーで使った建物を、今度はアート作品のプロジェクションに使ってて、違和感はなかった?
小泉 >より建物自体に興味が湧きました。あと、国道一号線の前だから、車がバンバン通るじゃないですか。たまたま通った人がどう思うのかとか・・・
Q. >市電に乗ったままプロジェクションを観ちゃった人の驚き!とか。聞いてみたいね。終了後に公会堂から作家さんをウェルカム・パーティの会場へ誘導する使命がありましたよね。
小泉 >最初は緊張してたけど、市電に乗る人は、あまり多くなかったんですよ。でも、30人くらいはいたかな。僕らは最後に海外の作家さんと一緒に市電に乗って会場までのガイドをしました。わりとスムーズに出来て良かったです。
Q. >あいちトリエンナーレの豊橋会場の作品は見ましたか?お気に入りは有りましたか?
小泉 >岡部さんのフロッタージュの作品は大好きです。ずっと缶バッジつけてますもん。スーパーの視点で見ちゃうんですけど、スーパーっていつもピカピカしてて、商品も入れ替わるし、昔の事ってあまり残ってない。キレイにすることだけに眼がむいている気がするんですよ。

岡部さんの作品は、昔の記憶を記録するコンセプトだったので、そういう視点がスーパーにあってもいいんじゃないかなと。なんでも新しくしたり、キレイとかピカピカを目指す以外にも歴史を記憶するような。愛着を残すような取り組み視点もあってもも良いじゃないかと思いました。

児玉くんのガイドツアーにも参加しました。やっぱ、作家さんの身近にいた人たちの言葉があると、違うものが見えますね。佐々木愛さんの絵は、単純に観てると凄いなと思うけど、素材が何かも知らなかった。水先案内人のような児玉くんの解説で、アイシングを使って作ってる事や、制作の背景などを知ってより面白く鑑賞できました。

あと、レアンドロ(リビジウンガ・カルドーゾ)のところ、結構遊んじゃいました。友達と踊ったりした。もっとたまり場になっても良かった筈のものだったけど、みんな遠巻きにしちゃってた。楽しんでいる姿を通りがかりの人に伝えないといけなかったかも。

味噌コーナーに置きたい!

Q. >そうなんだよね。こんな事ができるんだと、もっと地元からアピールすると良かったね。小泉君たちがツイッターに載せて拡散しないと!次回は期待してます!!他のエリアの会場には行きました?
小泉 >岡崎会場には行きました。なんといっても石原邸の関口涼子さんの作品ですね。スーパーでいつも見る「みそ」が作品になってる驚きがありました。スーパーは昔の井戸端みたいに毎日たくさんのお客さんが来るので、全部販促活動っぽくなってしまうかもしれませんが、アートとかクリエイティブな事にふれ合う機会が作れたら面白いなと前々から思っていました。作家さんとスーパーとして関わりたいと個人的には思ってます。

いつもみる「みそ」が関口さんの作品によって、ちょっと見る眼が変わったりとか、スーパーに来てくれるお客さんがそんな体験をしてくれたら、いいかなと思う。自分達も今は「みそ」を見る眼は、安心・安全などの価値観でしか見てないので、もっと広くひとつの食材として、スタッフも含めて見直して、なにか出来たら面白いじゃないかなと思ってます。

Q. >あいちトリエンナーレ2016の公式コンセプトブック「夢みる人のクロスロード」って有りますよね。関口涼子さんの「味の翻訳」は読みました?とても興味深い考察で、ビックリしましたけど。
小泉 >読みました読みました。味とか感覚も言葉に制限される。と書いてあって、確かにそうだなと。石原邸にあった調味料も全部嗅ぎました。自分達がおいしいと思ってるものって曖昧で、言葉によって決まってる。美味しいってなんだろうな、まで考えちゃった。もろの食材が出てきて直結した作品だった。障子にもみそをズームした写真があって新鮮でした。味噌コーナーに置きたい!

もうひとつ。パーラーニューポートビーチ(乙川殿橋南側欄干テラス)も良かったです。移動のための橋が過ごす場所として使われていて、やられたなと。豊川沿いもこんな風に使ってみたいと思いました。

Q. >アニマル・レリジョンに行きましたよね。どうだったですか?
小泉 >大学から帰ってきてからは、豊橋の歴史が気になり、何年かかけてでも調べようと思ってたんです。だから、豊橋公園には動物園があったことも調べて知っていました。拝戸さんと黒野さんの対談を読んた時に、そういうのを踏まえて作品が出来てったりした事に感動した。特に豊川沿いに注目してたので、不思議な感覚で嬉しかったです。

最終日で、お客さん大勢いましたよね。普通は見る時って向かい合ってる印象があるんだけど、地面だし。まるく囲んでいるだけだし、誰が舞台の人か解らないような一体感があった。外国人なので区別はつきやすいけど。お客さんも色々な見方で楽しんでいて、堀の高いところから見てる人もいたりして、和製円形劇場みたいだった。

Q. >豊橋でもこのようなイベントが出来るんだ!という感じはありました?
小泉 >ありました、ありました!終わったあと、メンバーが出てきた時に、“Make Some Noise TOYOHASHI”と言ったんですよ。アニマル・レリジョンだけじゃないけど、いろんなアートイベントがちょっとしたノイズになることで、改めて豊橋を考えるキッカケになって良かった。

あと、渥美フーズとしてお弁当を頼まれて、届けました。

Q. >そうでした!ビーガンのお弁当を頼まれたとか言ってましたよね。
小泉 >ビーガンの注文はちょっと難しかったので、ベジタリアン対応ぐらいのお弁当を届けました。スペイン人のお客さんなんて普段は無いし、最初は困惑したんですけど、担当者は新しい体験だと楽しんでいましたね。もろ和食でしたけど。日本のお弁当を食べてる風景も新鮮だったので、担当者にも写真で様子を伝えました。

箸袋を使ってお客さんとのコミュニケーションを変えていこう!

Q. >みずのうえビジターセンターでお店番もやっていただきました。やってみてどうでしたか?
小泉 >トリエンナーレに来てる人と会話したりはすることってめったにないけど、みずのうえはすごく話かけやすい場所だったので楽しかった。

ここがキッカケになって「まあるいおさら」で新しい取り組みが生まれたんですよ。ちょうど知り合いがお店番をしている時に「箸袋を使ってお客さんとのコミュニケーションを変えていこうと言ってる人がいるよ!」と聞いてすぐにそれだ!と思った。

接客をより丁寧にするとかではなくて、その箸袋の取り組みがあるだけで、お客さんとスタッフの関係が変わるんじゃないかと、ピンときた。すぐ逢いに行って、経営層もとんとん拍子に決まりました。「箸袋でなにかつくってね。それがごちそうさま。ありがとうのサイン。」というコミュニケーション・プロジェクトです。

箸袋でなにかつくってね。それがごちそうさま。ありがとうのサイン。

小泉 >食事したあとで、捨ててしまう箸袋をお客さんが折ってくれる。スタッフはお客さんの「ありがとう」が目に見えるし、片付ける時にそれを見てスタッフが盛り上がったり、お客さんとこれ凄いなと話すキッカケになってて、お店を和ませています。5月に東京で展示会があるので、その時はいままでの作品を送ります。
Q. >今までにどれくらい集まっていますか?
小泉 >予想より遥かに折ってくれています。2〜300個はあると思います。提唱者さんは今も日本全国を回ってるんですよ。これからも、こんな風にキャラヴァンする人を迎え入れて、おもしろい感性を自分達の生活や会社に取り入れていけたらなと思ってます。
Q. >それは凄い!まさに「虹のキャラヴァンサライ・創造する人間の旅」が続いていますね、素晴らしい。渥美フーズのお仲間は、あいちトリエンナーレについてはどんな感触なんでしょうか?
小泉 >今回は、自分しか関わっていないんですよ。「小泉がトリエンナーレっていう所にドリンクを持っていってるみたい・・・」ぐらいの感触だった。アニマルレリジョンのお弁当配達だとか、みずのうえのドリンク配達だとかライトな関わりを作れば良かったなと思います。普段、働いてる分にはふれ合うことのないような方達とのイベントだったので。

そうだ、みずのうえで「甘酒(飲む麹)」を納品しましたけど、キャラヴァンする人たちを癒やしたり、活力を!!と思った時に思いついたのは「スープ」でした。あと渥美半島の「茹でタコ」をその場で茹でるみたいな!!

Q. >えええ〜、そんな目論見があったの!
小泉 >スープは調理する設備がないし、「茹でタコ」は、パニックになりそうだなと。

その次に思いついたのが甘酒、酒粕に砂糖を足したものではなく糀(こうじ)でつくった甘酒です。黒野さんがおしゃれなドリンクをチョイスしてくれていたので、外しみたいなのもあったほうがよいかなと。

Q. >「茹でタコ」を食べるのは好きだけど、茹でながら売るのは大変である。決まらなくて良かった・・。甘酒は、癒やしになってましたね。椅子に座って和みながら飲んでくれたりしましたよ。有難うございました!
小泉 仁敬 Hirotaka Koizumi
トリエンナーレ部会
株式会社 渥美フーズ 販促企画担当
1988年愛知県豊橋市生まれ。豊橋市在住。立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部卒業。2013年入社、2年間鮮魚コーナー(「ブリ」という魚を知らなかった)を担当した後、販促企画担当として産地取材やPOP・イベント制作などを行う。好きな魚はマヒマヒ(シイラ)。

2017年1月[interview:S.Hikosaka]

会期は終了しています。記録として掲載しています。





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