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あいちトリエンナーレ2016を記憶する Vol.3 田口 友里衣さん

あいちトリエンナーレとアートシーン

あいちトリエンナーレ2016会期中に、名古屋市内で二つの展示会を行うなど、精力的なアート活動を展開してきたガラス造形作家の田口友里衣さん。トリエンナーレ部会のメンバーとして、水上ビル界隈を盛り上げるイベントやビジターセンターのお店番も柔軟にサポートしていただきました。
Q. >会場は全部回れましたか?今回の作品で印象的だったのは?
田口 >ほぼ行けました。名古屋会場では小杉武久さん。名古屋市美術館は黒川紀章さん設計で有名な建物ですけど、天井をぐっと見上げるところも作品になってるんですよ。建物の構造に反響しているようなインスタレーションが良かった。演奏会も行きたかったです。

岡崎会場ではシュレヤス・カルレさんですね。日常と非日常が曖昧な境界線上に並んでいるという空間が面白かったです。資料も読み応えがありました。

田口 >豊橋会場では小林耕平さんです。2013年の岡崎市美術博物館の企画展の時から気に入ってたので、楽しみにしていました。結果だけではなくて経過そのものが見られる面白さがあります。今回は豊橋での展示だったので2回行きました。こんな風にゆっくり楽しめたのは、地元だったからこそです。
田口 >小林耕平さんは年明けから豊田市美術館で展示されるんですよ。せっかくトリエンナーレで好きな作家さんに出会っても、遠方で活躍されてるとそれっきりになってしまいがちですが、こんな風に継続的に観られるのは有り難い事だと期待しています。
確かに追っかけたくてもエリア的な限界がありますが、豊田市なら近いので朗報です。開発ビルでの小林さんとは違う面が見られそうです。長い期間の展示となります。関連イベントもチェックして是非お出かけ下さい!

豊田市美術館【小林耕平さんと髙橋耕平さんの常設特別展】

切断してみる。 ― 二人の耕平/2017年1月14日[土]-2017年4月2日[日]
小林耕平×高橋耕平「切断トーク」1月14日(土)午後2時~ 会場:展示室

Q. >あいちトリエンナーレには、2010年も2013年も行かれてるとの事ですが、2016年の会場で特に注目した事は?
田口 >その度に芸術監督が違うので違いを感じることがおもしろいですね。
2016年はアートラボあいちの「芸術大学連携プロジェクト」が、特に気になりました。私の卒業した大学もこのプロジェクトに入っていて、今回は「アートラボあいち大津橋」と「アートラボあいち長者町」で連続した企画展をやってました。卒業生の作品もあったりするので、とても身近に感じました。地元の大学からトリエンナーレに続く道のようにも思いました。
Q. >地元の住民の参加状況はどうでしょう?ギャラリーの人などアートに関心の高い層もいれば、何かやってるなぁと遠巻きにしてるだけの層がいたりするように思いましたが。
田口 >既に関心の高い方々は、思い思いに楽しんでいたように思います。豊橋だけではなく、蒲郡、豊川、渥美などもですが、アートというよりもクラフト系のイベントの方が普段目にする機会が多いように思います。

会期中に、普段ギャラリーには行かなくても文化的なことに興味のありそうな人たちを惹きつけるようなイベントをやるとか、もっとワークショップを開いたり。イベントに来つつ、会場へ足を運んでもらうようにすると地元の人も参加しやすいかもしれませんね。

Q. >豊橋の向山にあるGallery SINCERITE(ギャラリー・サンセリテ)さんではトリエンナーレと同じ会期で「味岡伸太郎展 1975-2016」が開催されてました。みずのうえビジターセンターにもポスターを貼り、ポストカードを常設していました。
田口 >そうなんです。トリエンナーレ会期に合わせてギャラリーが現代美術の企画展を開催するのも、楽しみです。年々、こうした動きに注目している鑑賞者も増えてきている印象です。SNSの浸透で情報もキャッチしやすくなりましたし。

豊橋のサンセリテさんは、味岡さんの過去作品からモバイル・トリエンナーレのための連作など、かなり見ごたえのある展覧会でした!愛知県美術館の展示とこちらを見たことで、作家としての表現の厚みを実感しました。とても濃厚な体験でした。港監督とのトークイベントも行われましたし、豊橋市美術博物館館長との対談も企画されました。この時の民俗学的な奥三河のお話や、現代のアートシーンについての館長との対話は大変興味深いものでした。

Q. >豊橋のアートシーンもトリエンナーレに刺激を受け、進展しつづける事を期待しましょう。先ほど豊田市のタイムリーな情報をいただきましたが、3回目となる名古屋や2回目の岡崎などはどうだったでしょう?
田口 >名古屋市民ギャラリー矢田の私の担当さんは、あいちトリエンナーレのキュレーター服部浩之さんをパネリストに招いて「なごやコンテンポラリーアートマップ・ギャラリー矢田ライブvol.20+展覧会[あいちから世界へ―いま何を発信すべきか―]」という名古屋界隈の現代アートを扱う画廊の共同展&シンポジウムをやっていました。美術評論家の田中由紀子氏の選出です。名古屋界隈だけでも充分に力のある作家たちがいて、その層の厚さも実感しました。トリエンナーレイヤーに限らず今後もこうした活動を続けることが、現代アートの定着と発展、作家の育成だと思います。この中から次回のトリエンナーレ作家が出てくるのかもしれないと、ワクワクしながら作品を見ていました。

Aichi Art Travel – 次なるアートの旅へも、定着しつつある活動で、あいちトリエンナーレ2016以外でアートを盛り上げている立役者だと思っています。愛知に広がるアートイベントを網羅し、制作者にも鑑賞者にも有益なツールを目指した活動で、Web展開をメインとしています。これがある事で、小さなアートイベントや展覧会が見つけやすくなってると思います。トリエンナーレ期間中は、マップが発行されてました。

岡崎ではMasayoshi Suzuki Gallery が、精力的に若手の企画展を開催するので、注目しています。あと、2016年の1月に、2013年出展作家のstudio velocity と藤村龍至さんのトークイベントをやっていて拝聴してきました。2013年の展示でこちらのお二組を知り、とても作品が好きだったので、嬉しかったです。

Q. >Aichi Art Travel MAPはスタート時からみずのうえビジターセンターに置いてましたよね!会期中に更新バージョンが出たのも印象的でした。多くの方が手に取ってくださいました。有難うございました。
会期は終了しています。

田口 友里衣 Yurie Taguchi
トリエンナーレ部会
1985年愛知県豊川市生まれ。2007年 名古屋芸術大学美術学部造形科工芸(ガラス)コース卒業。
主な展覧会/あいちアートプログラム アーツ・チャレンジ2016入選/ 名古屋市民ギャラリー矢田パートナーシップ事業〈Next〉#4/ 田口友里衣展「here or there-過ぎてゆく日々-」(ギャルリーくさ笛)

2016年11月[interview:S.Hikosaka]

会期は終了しています。記録として掲載しています。





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