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あいちトリエンナーレ2016を記憶する Vol.2 加藤 慶さん

豊橋会場担当のアシスタントキュレーターさん

アシスタントキュレーターとして、豊橋エリアを担当、作品の設営を初めとして、会場で起こる様々な事柄を精力的にこなしてきた加藤慶さんです。
まずは、トリエンナーレ事務局スタッフに聞いてしまうのが早そうな質問を連発してみました。

Q. >日本人と外国人の来場比率をどう思いました?
加藤 >メイン会場である名古屋には海外からの来場者も来ていたように思います。国際展と云っても、地方まで足を延ばす海外からの来場者は多くはないだろうと考えていました。外国人は少ないだろうと思っていたので違和感はなかった。
つまり、想定内の人数だったようです。豊橋会場に限って云えば、それほど目立つ人数ではなかったのです。一日に1〜2組くらいかな?

主催者側の目標はどうだったのだろう?それで良かったのだろうかとの興味がありました。ほら、ヴェネツィア・ビエンナーレとかあるじゃないですか。国際展なんだから、外国からざくざく観客を呼ぶための催しなのかと思い込んでいました。これは単に私の認識不足。豊橋に、現代アートの海外作家さん作品にふれるチャンスがどっとやってきた!こちらにフォーカスなのかもね。

豊橋会場における海外からの出展者

海外からの参加アーティストを会場別・リストにしてみました。圧倒される数だと思いませんか?

アーティスト 拠点
穂の国とよはし芸術劇場PLAT
[T-02]ウダム・チャン・グエン ホーチミン(ベトナム)
[T-03]ジョアン・モデ リオデジャネイロ(ブラジル)
[T-24]ダニ・リマ<パフォーミングアーツ> リオデジャネイロ(ブラジル)
水上ビル
[T-04]ラウラ・リマ リオデジャネイロ(ブラジル)
[T-05]ヨルネル・マルティネス ハバナ(キューバ)
[T-06]イグナス・クルングレヴィチュス オスロ(ノルウェー)
[T-07]イグナス・クルングレヴィチュス オスロ(ノルウェー)
はざまビル
[T-08]リビジウンガ・カルドーゾ(別名:レアンドロ・ネレフ) サンパウロ(ブラジル)
[T-09]ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ ロッテルダム(オランダ)
開発ビル
[T-12]ニコラス・ガラニン アラスカ州シトカ(米国)
[T-15]グリナラ・カスマリエワ & ムラトベック・ジュマリエフ ビシュケク(キルギス共和国)
[T-17]ハリル・ラバー ラマッラ(パレスチナ)
[T-18]ハーバード大学感覚民族誌学ラボ マサチューセッツ州(米国)
豊橋市公会堂
[T-19]アローラ & カルサディーラ<パフォーミングアーツ> サンファン(プエルトリコ)
豊橋公園
[T-25]アニマル・レリジョン<パフォーミングアーツ> バルセロナ(スペイン)
※ブラジル拠点のアーティスト

豊橋会場の特徴的な取り組みについて

Q. >名古屋市が3回目、岡崎市が2回目。そして豊橋市は初参加となりますが、豊橋会場への集客はどうだったのでしょうか?
加藤 >お陰様で好調だったです。初めての会場は何かと注目されて有利な面は多いと云えます。出展する作家さんもその土地柄に合う人を起用していて、豊橋の場合は外国人居住者の内でブラジル人の割合が高いことを考慮しています。それらの要素も付加されて、良い結果を残せたように思います。

あいちトリエンナーレ2016・地区別入場者数

名古屋地区 豊橋地区 岡崎地区 モバイル 合計
428,000名 93,000名 77,000名 4,000名 602,000名

Q. >ブラジル人コミュニティーにはどのようにアプローチされたのでしょうか?
加藤 >ブラジルを拠点とするキュレーター、ダニエラ・カストロが加わり、ブラジルのアーティストを多く招聘できました。豊橋にはNPO法人ABT豊橋ブラジル協会(以下、「豊橋ブラジル協会」)があります。写真家であるマウロ・レスティフェ(ブラジル拠点)の作品は名古屋市美術館に展示したのですが、愛知県での撮影をしました。2015年12月頃ですね。豊橋ブラジル協会に出向き、いろいろご紹介いただきました。

豊橋市内で精力的に撮影をしていて、ブラジル人学校や岩田団地、濃縮ジュースをブラジルから輸入している会社にも同行していただきました。アーティストと一緒に風景やコミュニティに飛び込むような感覚です。文化を横断しているような、充実した内容でした。

※オスカー・ムリーリョさんとジョアン・モデさんの作品についてのアプローチは、担当コーディネーターさんにご登場いただきます。ご期待ください!

Q. >8月中旬にはパフォーミングアーツのダニ・リマさん登場。直前には日系ダンサーの清水悟さんによる子供たちのためのワークショップもありました。ちょうどリオデジャネイロではオリンピック開催中でした。
加藤 >楽しいイベントで両日とも盛り上がりました!ブラジル人の子どもたちもたくさん見にきてくれました。彼らはノリが凄くいいんですよ。PLATのアートスペースは客席とステージの境がないので、お客さんとの一体感が生まれてたと思います。このイベント時には、豊橋ブラジル協会にも所属する豊橋市国際交流協会の方に通訳などのサポートもお願いしました。

会場作り、動線作り

Q. >加藤さんは、アシスタントキュレーターとして会期前から何度も豊橋に来ているのですよね。いつ頃からですか?豊橋会場の印象はどうでしょう?
加藤 >豊橋会場の担当に決まり、2015年の11月ごろから会場の下見や調整などをしてきました。会場が駅から近い事、しかも全部歩いて回れる距離にある。PLATのような劇場や特徴的な水上ビル、ほぼビル1棟を使用した開発ビルはフロアーごとに作品が展開できたので、大きなスペースを使用して展示できました。豊橋はコンパクトなエリアのなかに、大小の展示スペースを回れたので来場者はそのコントラストも楽しんで貰えたかと思います。

また準備中も会期中も、まちの人たちは付かず離れずの程よい距離感で接してくれて有り難かったです。会場の事なども、無理なく柔軟に対応してくれたという印象です。

Q. >開発ビルは、エレベーターでいきなり最上階まで上がってしまう仕掛けですよね。展示をみながら順々に下の階に降りてくる。意表をつかれたし、とても面白いと思いました。このようなスタイルにしようと、最初から決めてました?
加藤 >はい、動線は最初の頃に決めていきます。明るさの問題や音の問題なども考慮しつつ、場作りをします。建築家やキュレーターと相談しながら、誰がどのスペースをどう使うかを調整したり。時にはアーティストを入れ替えたりもしますし、様々なリクエストを整理するのも重要な仕事です。

トークイベントについて

豊橋市制110周年市民提案イベントの募集があり、豊橋市駅前大通地区まちなみデザイン会議は以下の企画にて応募し、採択されました。
『He110!トヨハシ アート・カンファレンス』 ~現代アートで豊橋まちなかの魅力をアップしよう!~
この補助金を利用してトークイベントを企画・開催してきました。


吉田さん、加藤さん
Q. >6月には2010年、2013年に名古屋長者町会場の担当を務めた吉田有里さんをお招きして加藤さんとトークをしていただきました。大豊商店街のイベント「雨の日商店街」の会場にて開催しました。
加藤 >ラウラ・リマの会場の1階に畳を並べましたね。この時は、あいちトリエンナーレ2016の説明と、長者町はこれまでのトリエンナーレでどんな風に変わったか?と言った話題から入りました。

まちから展開するアートプロジェクトというだけでは伝わりにくかったのですが、この水上ビルもいくつかの空室が展示場所になることなどを説明すると、身近なイベントと捉えていただけたようでした。

Q. >会期直前の8月3日にみずのうえビジターセンターが完成しました。トリエンナーレ会期中は案内所兼休憩所として開放していましたが、アーティストさんやまちの人たちが気軽に交流できる場としてのスペースを備えています。
加藤 >トリエンナーレ部会のメンバーや、まちの人たちとの交流を目的に、オープニング・パーティーをしました。狭間ビルでの展示に向けて滞在中だったリビジウンガ・カルドーゾ(別名:レアンドロ・ネレフ)や、名古屋会場(愛知県美術館)で展示する地元豊橋の作家、味岡伸太郎も駆けつけてくれてプレゼンテーションを引き受けて貰いました。
Q. >レアンドロさんのパフォーマンスはとても刺激的で面白かったです。夜半になると、この時期に豊橋に滞在中だったアーティストの方々が大勢駆けつけてくれました。華やかなオープニングになりました。
加藤 >他にも、豊橋会場で制作中の石田尚志、小林耕平、佐々木愛、久門剛史が顔をだしてくれて、岡崎からもシュレヤス・カルレも遊びにきてくれました。まちの人たちがビジターセンターを立ち上げる事はずっと前から話していたので、みんな楽しみにしていました。港千尋芸術監督も駆けつけてくれて挨拶してくれました。
Q. >8月。ヨルネル・マルティネスさんのアーティスト・トークは開発ビル6Fで予定されていたのですが、急遽みずのうえビジタセンターにての開催となりました!
加藤 >港監督とも相談して、展示会場に近い場所でやろうとの話になり、みずのうえビジターセンターで行いました。オープニング・パーティーをした時に会場の状態もわかっていたのでスムースに準備できました。会場にはキュレーターのダニエラ・カストロやレアンドロも来てくれ、彼女たちからも話がでたりして、終始リラックスしたムードだったです。
Q. >8月のティータイムトークには岡崎会場担当のアシスタント・キュレーターである石田さんをお招きしました。
加藤 >同じ三河として岡崎会場の良い所を、豊橋の人たちに知っていただこうと企画しました。岡崎会場担当の石田大祐と、両会場の出展作家を担当した西田雅希の3人で、豊橋会場の魅力、岡崎会場の魅力を語りました。個人的には3会場というのが魅力だった。まちをまわり、比べる事によってそれぞれの特色を感じることができたら更にあいちトリエンナーレを楽しむ事ができるのかなと思って企画しました。この事がキッカケとなり、次の回には、名古屋・長者町会場を担当している舟橋牧子に豊橋へ来て貰うことになりました。

僕と黒野さんは、その後岡崎アートコミュニティ推進協議会から招待されて、岡崎会場のシビコでトークを行いました。その後、名古屋の長者町会場でも3会場の担当者たちが集まりトークをしました。その時も西田が進行役をしてくれました。彼女は3つの会場に担当作家がいて、現場を渡り歩いたのでモデレーターには適役でした。僕たちも会期中に現場で張り付いていると気付かないことが結構あるので、トークのなかで色々と発見することもできました。

豊橋会場が面白いなと思ったのも、それぞれのまちに出向いたことが大きかったと思います。本当は美術館の担当者とも交わればもっと活気が生まれたのかもしれませんが、まちから生まれる企画として、即席でできたことがかえって良かったのかもしれません。それが「みずのうえ」のトークから始まり、3都市にまたがり企画が発展した事は大きいと思います。

Q. >トリエンナーレ・ティータイムトークのラストは「2013-2016の3年間とその前後を語る」と題し、参加アーティストの久門剛史さんとキュレーターの服部浩之さんとの対談形式で行いました。
加藤 >出展作家のこれまでの足跡を辿りながら、担当したキュレーターがどのような眼で作品を観て、今回の作品につながるまでを話してもらいました。本来は会期中に、すべてのアーティストトークができたら良いのですが、意外とできないもので、作家の生の声がこうして聞けた事は貴重な機会でした。久門作品に興味を抱いた多くの方が詰め掛けてくれて、有意義な時間が作れたと思います。

有難う、ガチャガチャ!!

Q. >みずのうえビジターセンターの前に設置してて、豊橋会場の人気者ガチャガチャ!そもそもガチャガチャの導入は加藤さんのアイディアですよね。
加藤 >豊橋会場の想い出を何かしら持って帰って貰いたかった。水上ビルには花火屋さんや駄菓子屋さんも多いじゃないですか。お菓子を買うような楽しさを、ガチャガチャで味わってもらったらどうかと考えました。ただ、マシン代金が償却出来るかどうかは不安でした。賭けでしたけどね。
Q. >水上ビルのイメージありきだったのですね。なるほど!注目度バツグン、豊橋会場限定のアーティスト缶バッジ。
加藤 >作品を見た印象に繋がるものが良いと思い、豊橋会場のアーティストに説明して協力をお願いしました。皆さんとても協力的でした。岡崎会場のシュレヤス・カルレは豊橋会場にも遊びにきてくれてたので、彼にもお願いしました。

他には豊橋のknohdでArt & Breakfastのイベントを行った三田村光土里や、長者町会場の今村文、アドリアナ・ミノリーティも参加してくれました。

期間限定で、長者町コイン付きも入れました。観客だけでなく、会場ボランティアの皆さんにも大人気。特にシュレヤス・カルレさんの缶バッジは、岡崎会場のボランティアさんが豊橋まで続々と買いにきてくれたんですよ!熱かったです。

岡部さん、石田さん、久門さん、佐々木さんなどなど、ご贔屓のアーティストさんの缶バッジが出て、その場がぱっと華やぐ瞬間に何度も遭遇しました。コンプリートを狙い通い続けてくれた人もいましたし、閉店後にガチャガチャだけトライさせて!という人も。

ラストの週は、注文と補充を繰り返す日々。この執念あってこそ!見事に最終日の夕方までガチャガチャは大活躍しました!日が暮れかかった閉店間際、最後のひとつまで売り尽くしてしまったのです。懸案のマシン代も無事に償却できて、ビジターセンターの活動費にも回ってきた事をご報告しておきましょう!やったね!

Q. >みずのうえビジターセンター自体が、豊橋会場限定国際展1日チケットをガチャガチャで売ってる所としてSNSでも注目されました!
加藤 >300円という価格はガチャガチャ向きですよね。どちらを主というのではなく、最初からセットで考えてました。
大当たり!チケットの場合、一度に買う枚数が多い時は、手売りの方が早いかも。でも、両替をしてでもガチャガチャで買いたいという人の方が断然多かったです。ボランティアさんもみずのうえビジターセンターならガチャガチャで買えると積極的にガイドしてくれて、有り難かった。大いに売上を伸ばしました。

店内が混み合った時も、ガチャガチャだけはマイペースで代金を徴収して、売上枚数をカウントしてくれてる優等生。ガチャガチャ良く頑張りました!!加藤さん有難う!!!

ガイドツアーの足跡

Q. >みずのうえビジターセンターでお店番をしていて、何度も遭遇したのが加藤さんのガイドツアー。いろいろなタイプの方を案内されていました。
加藤 >学生さんからお役人さんなど、様々な方々のガイドをしましたね。豊橋市内、県内、を初めとして北海道や沖縄など遠方からや海外の方の場合もありました。ガイドをするのは好きです。説明が必要とは限らない時もあるので、様子を見ながらですけどね。

アートに限らず、建物の事やグルメ情報など、まぁ何でもありですよね。何かを説明することで少しでも理解を深めるヒントになればと思っています。

Q. >有難うございました。
みずのうえビジターセンター前を通過したガイドツアーの足跡です。殆どストーカー状態みたいですが、これでも、撮り逃しの方が多いと思う。あっという間に通り過ぎてしまう時もあったし、缶バッジの争奪戦が始まる場合も。しっかり売上にも貢献していただきました。加藤さん再び有難う!!

加藤 慶 Kei Kato
あいちトリエンナーレ2016 アシスタントキュレーター
1981年生まれ神奈川県育ち。名古屋市在住。多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻コミュニケーションデザイン領域修了。2008年~2015年相模原市民ギャラリー、アートラボはしもと勤務。近年では、「Super Open Studio DRIVE! (黄金町バザール2014)、ズンマチャンゴのかけら箱(六本木アートナイト2015)」などを企画。
2016年11月[interview:S.Hikosaka]

会期は終了しています。記録として掲載しています。



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