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みずのうえTALK-0号 8/3 アーティストによるプレゼンテーション

みずのうえビジターセンター

8月3日、「みずのうえビジターセンター」がオープンしました。

あいちトリエンナーレで作品設営に来ている作家たちやスタッフ、私たち駅デザ会議トリエンナーレ部会のメンバーや、街の人たちとの交流を目的に、盛大なパーティーが催されました。

8月11日のトリエンナーレ開幕を目前にして作品設営で忙しいなか、たくさんの作家が立ち寄ってくれました。ここでは、特に作品のプレゼンテーションを行ってくれた作家、リビジウンガ・カルドーゾ(別名:レアンドロ・ネレフ)さんと、味岡伸太郎さんの作品プレゼンテーションについて書こうと思います。

リビジウンガ・カルドーゾ(別名:レアンドロ・ネレフ)

1975年ブラジル生まれ / サンパウロ(ブラジル)拠点
“曖昧な領域でのオルタナティブな知“
社会科学と視覚芸術を学んだカルドーソは、そのあいだを行き来することで、ふたつの境界を融解させ、型にはまることのない新たなる知の生産を試みている。近年ではとりわけ、ラテンアメリカの歴史的叙述に関心を寄せている。
[豊橋駅前大通会場 狭間ビル大場 1F]
−あいちトリエンナーレ2016公式ガイドブックより−

レアンドロは、何も言わずにパソコンをプロジェクターとスピーカーに接続し、鳥の声や、なにやら原始的な民族音楽を流し始め、スクリーンには土偶や、どこかの先住民族や、水牛に乗った兵隊や、新幹線の写真などを、次々に表示していきます。レアンドロは写真や音に対する説明を全くせず、15分くらいの間、DJのようなVJのような、言葉を使わないプレゼンテーションを淡々と続けます。土偶から始まったイメージの連鎖は、いつのまにか新幹線や現在のパチンコへと接続し、15分ほどのプレゼンの中で、太古から現代までの膨大な時間のなかで、世界中で生み出されてきたイメージ、その形態と色、音色などが全て圧縮されたものを見たような気持ちになりました。

ほぼ無言の15分のビジュアルオーディオプレゼンテーションのあとは、愛知大学文学部メディア芸術専攻の教員である私が司会を務め、あいちトリエンナーレ2016芸術監督の港千尋さんと、レアンドロとのトークタイム。

「自然と人間を分けたり、対立したものとして考えるなんて、北海道のアイヌ民族や、アマゾンで暮らす人たちに話したら、きっと大笑いすると思う。自然(Nature)と人間の文化(culture)は、切り離せず同時に存在しているものなのだから」。

狭間ビルの展示会場に巨大なサウンドシップをインスタレーションしているレアンドロは、テクノロジーや科学に強いイメージでしたが、むしろ文化人類学や考古学者のようなアプローチで表現をしている作家なのだと感じました。そして、現在という時間を、どこか数千年先からタイムマシーンに乗ってやってきて、サンプル採取してして調査している未来からきた考古学者、そんなイメージです。


狭間ビル会場 1F

味岡伸太郎

1949年愛知生まれ / 愛知拠点
“あいちの土のカラーチャートを知る“
タイポグラファーとして知られ、また採取した土を絵画作品として発表する作家でもある。今回は愛知県が接する県境の70カ所の断層部分から採取した土を展示。まさに絵画のごとく色彩豊かな土の表情に魅了されるはず。
[愛知芸術文化センター 愛知県美術館 8F]
−あいちトリエンナーレ2016公式ガイドブックより−

味岡さんは、ちょうど名古屋会場の愛知県美術館での展示設営が終わったところで、この「みずのうえ」オープニングパーティーに駆けつけてくださいました。今回の新作のために、静岡との県境(豊橋市)の太平洋側から、山の中の長野県境、岐阜県境を経て、ふたたび太平洋側の三重県との県境(弥富市)までの愛知県の県境から土を採取したときの様子を写真や地図で説明してくださいました。

また、名古屋の展示会場の図面やコンセプトもお聞きしました。
レアンドロのプレゼンのあとで味岡さんのお話を聞くと、「県境」というものは所詮人間が便宜的に作り出した線に過ぎず、土はどこまでも連続していることに気がつきます。そして味岡さんの作品が、県境として人為的に作り出された「線」が「絵画」という人間独特の営みとして表現に立ち上がってくることが、興味深いことだと感じました。

レアンドロ、味岡さん以外にも、たくさんの作家たちが「みずのうえ」を訪れてくれました。

これからも「みずのうえ」で、トークイベントなど企画できたらと思います。お楽しみに!

愛知大学文学部メディア芸術専攻准教授 / 舞台映像デザイナー 山田晋平





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